第5章: 養生訓における禁欲と自然の摂理

『養生訓』では、禁欲が健康の維持において非常に重要な要素として繰り返し強調されています。益軒は、欲望を抑えることが健康に良い影響を与え、長寿を保つために必要だと考えました。この章では、益軒が教える「禁欲」の意味と、その背景にある自然の摂理について詳しく見ていきます。

1. 禁欲とは?

益軒が言う「禁欲」とは、ただ単に我慢することではなく、体に無駄な負担をかけないようにすることです。現代で言うところの、健康的な生活習慣を守ることに近いと言えます。例えば、過度な食欲を抑え、過剰な飲酒や過度の睡眠を避けることが、益軒が説く禁欲です。

現代でも、「食べ過ぎが体に良くない」「無理に働きすぎると体を壊す」などはよく言われることですが、益軒もまた、欲望をコントロールすることが長生きのために必要だと教えています。特に食事に関しては、多すぎず少なすぎず、適量を守ることが大切だとされています。

2. 内欲と外邪のバランス

『養生訓』で益軒が教えている重要な概念の一つに、**「内欲」と「外邪」**という考え方があります。内欲は、食欲や性欲、睡眠欲、さらには感情や欲望のことを指します。外邪は、寒さや湿気、風などの外的な要因が体に与える影響を意味します。

益軒は、内欲を抑えることが、外邪の影響から体を守るために重要だと考えました。つまり、内欲を抑えることで、体が過度に疲れたり、病気になったりすることを防げるのです。例えば、食べ過ぎや寝すぎ、欲に任せた生活は、体に不調をもたらす原因となります。これらを抑え、バランスの取れた生活を送ることが、健康を維持するために大切だと説いています。

3. 自然の摂理との調和

『養生訓』では、自然の摂理に従うことが健康維持の基本であると考えられています。自然の摂理とは、自然界の秩序や法則であり、それに従うことで、私たちは健康を保つことができるとされています。益軒は、自然と調和することが、内欲を抑えることに繋がると考えました。

例えば、自然のサイクル(季節の変化や日光のリズム)に合わせて生活することが、体にとって最も健康的だと教えています。これを現代風に言うならば、規則正しい生活を送り、過剰な欲望に流されないようにすることが、健康を守るための基本だと言えます。

4. 現代における禁欲の重要性

現代社会では、物質的に豊かになり、手に入れたいものをすぐに手に入れることができる環境が整っています。そのため、欲望を抑えることが難しくなっているのが現実です。特に、食べ過ぎや運動不足、過度のスマートフォンの使用、ストレスの多い生活などが、私たちの体に悪影響を与えています。

益軒の「禁欲」の教えは、現代においても非常に重要です。現代人は、欲望に振り回されることなく、バランスの取れた生活を送ることが、健康を維持するために必要だと言えるでしょう。例えば、食事の過剰摂取を避けること、適度な運動を心がけること、心の安定を保つことなどは、すべて益軒が教えた「禁欲」の実践に繋がります。

5. 欲望をコントロールするための実践法

欲望をコントロールするためには、まず自分自身の欲求に気づくことが大切です。どんなときに過剰に食べたくなるのか、どんなときに怒りやストレスを感じるのかを知り、それをどうコントロールするかを考えることが、禁欲の第一歩です。

また、欲望を抑えるためには、心の余裕を持つことも重要です。忙しい日々の中で、少しの時間を使ってリラックスし、心を落ち着けることが、欲望に流されないために必要なことです。例えば、深呼吸や瞑想、散歩をすることで、心を静め、欲望をコントロールしやすくなります。

まとめ

『養生訓』における禁欲は、ただ我慢することではなく、心と体のバランスを保ちながら、欲望をコントロールすることが健康を保つために必要だという教えです。現代社会においても、欲望に振り回されず、バランスの取れた生活を送ることが、健康長寿の秘訣です。益軒の教えを実践することで、自然と調和した生活が実現でき、体と心を健やかに保つことができるのです。