クレイジーマラソン道:「己を知れ!」100歳完走への道〜心・技・体を磨く実践哲学(第2回)〜
仕事の成果を出すことは、多くの社会人が関心のあることだと思います。そしてその成果が昇給や昇進に結びつくものだと信じるのは当然のことでしょう。
しかし、組織に属している以上、純粋な仕事の成果とは関係なく、人間関係の煩わしさにストレスを抱えることがあります。人間のストレスの大半は人間関係によってもたらされるという説もあるほどです。会社員にとって、人間関係のストレスも減らして、昇進や昇給も早めたい、と考えるのはごく自然なことです。
会社員に限定した話になってしまいますが、かつて野村證券か野村総研だったかが(不正確ですみません)、会社員で出世する人、出世が早い人にどんな共通点があるかを調査したことがあるそうです。結論から言うと、特に顕著な共通点はなかったそうです。
なんだ、わからないのかい!と言われそうですが、この調査で、自身がコントロール不能なある共通点らしきものがあることもわかったそうです。
その唯一の共通点は、「社会人になって最初についた上司が有能な人だった」というものでした。
上司が有能かどうかは極めて主観的なものなので、そんな調査結果に意味があるのかと思うかもしれませんが、むしろ、この主観的であることが非常にポイントだと思っています。
そして、特に重要な点は、最初についた上司が有能かどうかはともかくとして、新社会人にとって、最初の上司が与える影響は大きいということです。
例えば、
・上司A:とにかくいい加減、ネガティブ、人間関係も雑、仕事も遅い、不平不満ばかり言う、他人の短所ばかり気にする、常に他責、会社の悪口ばかり言う、常に自分勝手
・上司B:とにかく丁寧、ポジティブ、人間関係が一番重要、スピード命、不平不満は一切口にしない、他人を褒めまくる、常に自責、会社の悪口は決して言わない、常に会社が主語
やや極端に書きましたが、最初に上司Aにつくか上司Bにつくかで、その後の仕事におけるマインドが決まってしまってもおかしくないでしょう。
もちろん、すべてが最初に決まってしまうわけではなく、その後、素晴らしい上司に出会ってマインドチェンジすることもあるでしょう。しかし、社会人2年目、3年目、30代、40代とベテランになるに従って、そのような良い方向へのマインドチェンジは難しくなるのも事実としてあるのではないかと思います。
なぜ冒頭でこのような話をしたかというと、この話は何か新しいことにチャレンジするような場面の多くにあてはまるのではないかと思うのです。
そして、ここでの本題はマラソンです。マラソンの場合も、全くこの話があてはまるのではないかと思うのです。
良いとか悪いとかの話ではありません。
僕のマラソンでのテーマは、マラソンを通じて「己を知れ!」ということですから、その部分に大きな影響を受けるのではないか、ということなのです。単にタイムが速くなる、ならないという話ではないので、そういうことにしか興味がない方には響かない話かもしれません。
「座右の銘」との出会い
陸上経験がなく、社会人になって、特に30代、40代、50代になってからフルマラソンにチャレンジする方は非常に多いです。いわゆる市民ランナー、非エリートランナーです。
こういう人たち、もちろん46歳から走り始めた僕自身も含めて、多くの場合、どんな練習をしたら良いかを、マラソン経験者の先輩方や専門家、あるいは書籍やYouTubeなどの動画で学んでいるはずです。
良くも悪くも、その最初の最初で、その後のマラソン人生に大きな影響を受けている可能性があると思うのです。新社会人の話と全く同じです。途中で良い指導者やベテランランナーに出会って、自身のマラソンマインドが変化し、記録が一気に伸びることもあるでしょうから、一概には言えませんが、僕が言いたいのは、そういう傾向があることは否定できないということです。
それは誰もが単に速くなるとかそういう単純な話ではなくて、いかに自分自身に適した、「己を知る」ことの近道になるような出会いが最初にあったかどうかということだと思うのです。
それが僕の場合、どういうものだったかという話をします。
僕は走り始めた頃、会社の仲間たちと大会に参加したりという経験はありましたが、みんなマラソン初心者で、大きな影響を受けるようなベテランランナーはいませんでした。ですから、マラソンに関する書籍や動画やブログなどを非常に多く見ていました。
その中で、まさにその後のマラソン人生を決定づけるほどの影響を受けたものが二つあったのです。
まず最初は書籍です。
マラソンをはじめた当初はとにかく減量、そして健康になることが一番の目的でしたから、そこまで記録にはこだわっていませんでした。しかし、走る以上は市民ランナーの最初の目標である「サブ4」(上位20〜30%くらいに相当すると言われていた)をいつか達成したいと思っていました。一方で、陸上経験がないことや、40代後半から突然走り始めたことなどから、多くの書籍や専門家が推奨する練習など、とてもできないとも考えていました。
少しずつ距離が伸びて5km、10kmを走れるようになったと言っても、ペースはせいぜいキロ7分から8分程度のスピードです。キロ6分台なんて相当しんどいレベル、キロ5分台なんて1kmタイムトライアルレベルでした。サブ4を達成するにはキロ5分40秒ペースが必要ということも認識はしていたので、これは相当厳しい戦いになるなと感じていました。
でも、そんな時でした。まだ初心者の僕には、フルマラソンをキロ5分40秒で走るにはペース走が重要だと訴える人が周りに誰もいませんでした。もしこの時、身近にペース走の重要性を訴える先輩ランナーがいたら、僕は今頃マラソンをやっていなかったかもしれません。それくらい、サブ3.5を達成した今でも、ペース走なんて絶対やりたくない練習ですし、こんな練習をしていたら、絶対に長続きしないと思います。
でもペース走なんてやらなくても速くなれる!強くなれる!という僕の脳に決定的な影響を与えた書籍に出会うのです。何十冊と読んだ書籍の中から、自分に合っているのはこれだと、一瞬でバイブルとなったのです。元来が怠け者だった僕には、多くの指導者が書いている練習方法なんて絶対長続きしないと思いましたし、極論はタイム向上ではなく、息の長いマラソン人生を続けたいという自身の考え方にもぴたりと合致したのです。
その本は、『常識破りの川内優輝マラソンメソッド (SB新書)』(津田 誠一 著)です。
一言でいえば「練習を頑張りすぎない」「スピード練習なんて最小限でOK」というようなことが書かれています。マラソン初心者で、僕のような考え方に近いと思われる方には絶対おすすめしたい本です。間違っても、身近にいる追い込んだ練習が大好きなベテランランナーの言うことを信じてはいけません(笑)。
この書籍の中で、マラソン初心者の僕に希望と勇気を与えてくれた、今現在まで僕のマラソン人生を決定づけたフレーズを紹介します。
「練習でできないことが本番でできるか!」などと正論めいたことをいう人もいるようですが、中長距離というのは不思議なもので、練習でできないことが本番でできる。むしろ本番さながらの練習をすると、目に見えない疲労やコンディションの悪化を招き、日ごろの練習で積み重ねてきた基礎的な走力さえ低下して結果が出なくなるものなのです。」(『常識破りの川内優輝マラソンメソッド (SB新書)』(津田 誠一 著)より)
マラソン初心者の方に断言します!
「練習でできないことが本番でできるか!」…こう思っている人は本当に多いです。
「練習でできないことが本番でできる!」…こう思っている人は本当に本当に少ないです。
もちろん僕は後者です。このフレーズに出会い、僕のマラソン脳は完全にこの言葉に支配されました。しかも、それによって、サブ4、サブ3.5もきっちり達成できました。
本当に信じるか信じないかはあなた次第です!という話になってしまいますが、信じるものは救われます。
「座右の銘」が「確信」に変わった日
自分自身もこのフレーズに出会った当初は、まだ半信半疑だったかもしれません。しかし、これが確信に変わる出来事が、これから間もないときに起こったのです。
僕が走り始めたのは、2016年の夏(当時46歳)です。いつかはフルマラソンに出たいと思いながら走り続けて、翌年2月の木津川マラソンに会社の仲間たちとエントリーするという目標にしました。そして、その前に一度ハーフマラソン大会にも出場しようということになって、後輩と二人で2016年12月の亀岡ハーフマラソンに参加することになったのです。
目標は大きく、2時間以内。単純にいつかサブ4を目指すんだから、ハーフで2時間を切らないことには、サブ4挑戦への資格すらないと思ったからです。
しかし、練習でキロ5分40秒はおろか、6分台でも相当にしんどいレベル。基本のジョグはほぼ100%キロ7分台です。そんな僕が、本気でハーフ2時間以内を目指していたんです。
だって、「練習でできないことが本番でできるのがマラソン」なんでしょ?
レースって初めて参加するけど、アドレナリンが出まくって速く走れるんでしょ?本気でそう思っていました。
結果だけ先に載せると、1時間57分44秒でした。
この結果に対して、僕は「なるほど!津田氏の言っていることは間違いない!この人の指導、この書籍で言っていることは、ホンモノだな!」と心から思いました。
レースに初めて参加してみて、僕が抱いた率直な感想です。もちろん、GPSウォッチをつけて走りましたが、スタートしてしばらくして、大きな集団について、ゆっくりキロ7分くらいのいつものペースで走っている感覚で時計をみました。
なんと、キロ5分30秒くらいのペースでゆっくり走っていたのです。
「なるほど!アドレナリンというのはこういうことか!」
これは初めての体験で少し衝撃でした。
このように、最初に出会った指導者(書籍ですが)、最初に走った大会での経験が、僕のその後のマラソン人生を決定づけたのではないかと思います。
まとめ:自分だけの「座右の銘」を見つけること
座右の銘だからと言って、誰にでも当てはまるものではありません。
僕にとって、この言葉がしっくりきたのは、「己を知る」、つまり自分の体の特徴、性格の特徴、そして「怠け者」という性質の特徴から、この座右の銘が一番合っていたからです。
多くの人が座右の銘を持つのは良いことだと思いますが、その大前提として、ここでも「己をよく知った上で」、座右の銘や目標を決めるべきだ、ということです。
- 連載開始日:2025年9月9日
- 連載開始日現在の月間走行距離:2025年6月は473km
- 連載開始日現在の年齢:56歳
- 現在の目標:100歳でフルマラソン完走
- 最新のフルマラソン自己ベスト:3時間28分04秒(2025年3月びわ湖マラソン)
- フルマラソン完走回数:38回(出場39回、途中棄権1回)
- 47都道府県フルマラソン大会制覇数:18/47
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