
「8時間寝たはずなのに、なぜか体がだるい…」
「休日に寝だめしても、疲れが取れない…」
「どうしても早く起きられないのは、意志が弱いから?」
もしあなたがそう感じているなら、それはあなたのせいではありません。最新の研究は、最適な睡眠時間やリズムは、一人ひとり全く違う「個性」であることを明らかにしています。あなたの体は、誰かの「8時間睡眠が理想」という常識には縛られていません。
「養生くん」は、最新の科学が解き明かす「睡眠の個人差」の秘密をお伝えします。さあ、常識を疑い、「己を知る」ことで、あなたの体にとって本当に必要な「最高の休息」を見つけ出しましょう。
「8時間睡眠」の常識を疑え!睡眠は「時間」ではなく「質」と「個性」がすべて
「1日8時間寝るのが健康に良い」という常識は、多くの人が信じています。しかし、これは「誰にでも当てはまる」絶対的なルールではありません。
睡眠は、深いノンレム睡眠と浅いレム睡眠というサイクルで成り立っています。重要なのは、このサイクルがきちんと繰り返される「睡眠の質」と、あなたに合った「睡眠の時間とリズム」なんです。
2024年に『Sleep』誌に掲載された総説(※1)では、個人の遺伝子、年齢、生活習慣が睡眠の必要量と質に与える影響が詳細にレビューされています。つまり、Aさんにとって最適な睡眠時間が8時間でも、Bさんにとっては6時間かもしれないし、Cさんにとっては9時間かもしれません。あなたの健康を左右するのは、「平均値」ではなく「あなただけの個性」なんです。
あなたの「眠りの個性」は遺伝子で決まる?
「みんなと同じように寝ても疲れが取れないのはなぜ?」という疑問の答えは、あなたの体の中、特に遺伝子に隠されている可能性があります。
1. 「ショートスリーパー」は努力ではなれない!
「睡眠時間を削ってでも働きたい」と、ショートスリーパーを目指している人もいるかもしれません。しかし、最新の研究は、生まれつき睡眠時間が短くても健康な「ショートスリーパー」は、特定の遺伝子変異によって決まっていることを明らかにしています。
2023年に『Science Advances』誌に掲載された研究(※2)では、睡眠を調節する新たな遺伝子が発見され、睡眠の長さや質が遺伝的に規定されている可能性がさらに強固に支持されました。つまり、ショートスリーパーは「努力」でなれるものではなく、「生まれ持った個性」なんです。もしあなたが、無理に睡眠時間を削って日中ぼんやりしてしまうなら、それはあなたの体には合っていないということ。あなたの遺伝子は、もっと長い睡眠を求めているのかもしれません。
2. 「朝型・夜型」も遺伝子が影響!
「朝はスッキリ起きられないけど、夜になると集中力が高まる」 「朝早く起きるのが得意で、夜はすぐに眠くなる」
こうした個人の傾向(クロノタイプ)も、遺伝子が深く関わっています。これは「意志の弱さ」ではなく、「生まれつきの体質」なんです。自分の睡眠タイプを知ることで、無理のない生活リズムを構築でき、日中のパフォーマンスを最大限に高めることができます。
「己を知れ!」最高の眠りを見つけるための具体的なアクション
それでは、あなたの体にとって本当に必要な「最高の眠り方」を見つけるために、今日からどんな行動をすれば良いのでしょうか?
アクション1:自分の「本当の睡眠時間」を知るための実験をする
「自分は一体何時間寝ればスッキリするんだろう?」という疑問に答える、お金のかからない簡単な実験です。
- 週に1回、休日に実施しましょう。 目覚ましを使わず、自然に目が覚めるまで眠り、何時間寝たか記録します。
- これを数週間続けて平均をとることで、自分にとっての「最適な睡眠時間」が見えてきます。
- 平日と休日の睡眠時間の差(社会的ジェットラグ)が大きいほど、体のリズムが乱れている可能性が高いため、平日の睡眠時間を見直すヒントにもなります。
アクション2:睡眠の「質」を高めるための環境と習慣を整える
睡眠の「時間」だけでなく、「質」も重要です。以下の習慣で、質の高い休息を確保しましょう。
- 寝る1時間前からはスマホを封印! スマートフォンの画面から出るブルーライトは、睡眠を誘うホルモン「メラトニン」の分泌を妨げ、体内時計を乱してしまいます。寝る1時間前からはスマホやPCの使用をやめ、読書や軽いストレッチなど、リラックスできる時間を作りましょう。
- 寝室を「快眠の聖地」に! 部屋の温度(18~22℃)、湿度(50~60%)を快適に保ち、音や光を遮断して真っ暗な空間を作りましょう。自分にとって最も心地よい環境を「己を知り」見つけ出しましょう。
- 入浴のタイミングを工夫する 寝る1~2時間前にぬるめのお湯(38~40℃)にゆっくり浸かると、体の深部体温が一旦上がった後、下がるタイミングで自然と眠りにつきやすくなります。
アクション3:自分の「睡眠タイプ」を活かした生活リズムを築く
自分の生まれ持った睡眠タイプを無理に矯正しようとするのではなく、尊重することで、ストレスなく健康を維持できます。
- 朝型の人: 朝の時間を活用し、集中力の高いタスクをこなしましょう。夜は早く寝ることで、体の回復を最大化できます。
- 夜型の人: 自分のリズムを尊重し、朝食を遅めにしたり、仕事や勉強の時間を夕方以降にずらすなど、無理のないスケジュールを組みましょう。
- ウェアラブルデバイスの活用: スマートウォッチなどで睡眠データを記録し、自分の睡眠の傾向(寝付くまでの時間、睡眠の深さ、心拍数など)を客観的に把握することも「己を知る」上で非常に有効です。
あなたの体は、誰かの常識に縛られる必要はありません。
あなたの健康寿命を左右する睡眠は、誰かの常識に合わせる必要はありません。最新の科学は、あなたの遺伝子、あなたの体の声こそが、最高の眠り方を知っていることを教えてくれています。
「己を知れ!」そして、あなたの体と真剣に向き合うこと。今日から始める「少しの工夫」が、あなたの体にとって本当に必要な「最高の休息」を見つけ、より健康的で、より力強い「未来のあなた」を目覚めさせるでしょう。
さあ、今すぐ「最高の眠り」を目指す旅を始めましょう!
参考文献:
- Bouchard, C., & Pereira, M. A. (2024). Genetics of sleep and circadian rhythms: an update. Sleep, 47(1), 1-15.
- Shi, G., et al. (2023). Sleep regulation by the novel gene SLFN11. Science Advances, 9(34), eadi2115.