「マラソンには炭水化物だ!」 「試合前にはうどんやパスタでエネルギーをためろ!」
もしあなたがそう信じて疑わないなら、今日、その常識は覆されるかもしれません。
もちろん、マラソンランナーにとって炭水化物が重要なエネルギー源であることは間違いありません。しかし、最先端の科学は、それだけでは勝てない、もっと深く、もっと重要な「秘密」があなたの体内に隠されていることを突き止めました。
それは、あなたの「腸内環境」です。
この記事では、最新の研究論文を基に、腸内環境がマラソンパフォーマンスにどれほど大きな影響を与えているのか、その衝撃的な事実と、あなたが今日からできる具体的な「腸活」戦略をお届けします。
「腸内環境」がマラソン記録に影響するって本当?
「腸は消化器官だろ?ランニングとは関係ない」そう思うかもしれません。しかし、近年のスポーツ科学は、腸内環境とアスリートのパフォーマンスが深く結びついている「腸-運動軸(gut-exercise axis)」という概念に注目しています。
2024年4月に権威ある科学誌『Nature Medicine』に掲載された画期的な研究論文(※1)が、この常識を根底から覆しました。この論文は、エリートマラソンランナーと市民ランナーの腸内フローラ(腸内細菌叢)を比較し、エリートランナーの腸内には、市民ランナーには少ない特定の種類の腸内細菌が豊富に存在することを発見しました。
そして、この細菌たちが、マラソン中に筋肉の疲労を軽減する特定の物質(プロピオン酸や酪酸などの短鎖脂肪酸)を多く生成していることを突き止めたのです。つまり、エリートランナーの腸内細菌は、まるで専属の栄養士のように、ランニング中に必要なエネルギーや疲労回復物質を作り出していたのです。
この研究が示す事実は、「炭水化物」という外からのエネルギーだけでなく、「腸内細菌」という内側から作り出されるエネルギーと物質こそが、マラソンの限界を突破するカギを握っている可能性を示しています。
「己を知れ!」トップランナーと同じ食事をしても勝てない本当の理由
「プロのランナーと同じ食事、同じ練習をしているのに、なぜ自分は記録が伸びないんだ…?」
もしあなたがそう悩んでいるなら、それはあなたの体が「トップランナーの腸」を持っていないからかもしれません。
私たちは皆、異なる腸内環境を持っています。腸内フローラは、食事、生活習慣、遺伝、そして過去の抗生物質の使用などによって、一人ひとり全く違う「個性」を持っています。同じものを食べても、あなたの腸内細菌はトップランナーと同じように反応し、同じ物質を作り出すとは限りません。
画一的な「カーボローディング」や「アミノ酸摂取」だけでは不十分な時代になりました。これからは、「自分の腸内環境」という「己」を深く知り、それに合わせた栄養戦略を立てることが、記録向上のための最も重要な一歩となるでしょう。
ランナーのための【腸活】最強戦略!今日からできる具体的なアクション
それでは、あなたの腸内環境を最高の状態に整え、パフォーマンスを向上させるために、今日からどんな行動をすれば良いのでしょうか?
1. 「腸内フローラ」の多様性を高める食事戦略
腸内細菌の種類が多ければ多いほど、様々な物質を作り出す能力が高まります。腸内フローラの「多様性」を高めることを意識して食事をしましょう。
- アクション例:多種多様な食物繊維を摂る(毎日)
- 腸内細菌の「エサ」となる食物繊維は、腸内環境を整える上で不可欠です。特定の野菜だけでなく、様々な種類の野菜、海藻、きのこ、豆類を積極的に摂りましょう。例えば、週に一度はスーパーで「今まで買ったことがない野菜」を選んでみるのも良いでしょう。
- 主食は、白米だけでなく、玄米や大麦、オートミールなどを取り入れてみましょう。
- アクション例:発酵食品を幅広く取り入れる(毎日)
- ヨーグルト、納豆、味噌、漬物、キムチなどには、腸内環境を整える善玉菌が含まれています。特定の食品に偏らず、様々な種類の発酵食品を日替わりで摂ることをお勧めします。
- アクション例:超加工食品を控える(週に1回以下)
- 超加工食品は、腸内フローラの多様性を低下させ、パフォーマンスを損なう可能性があります。できるだけ避けるようにしましょう。
2. 「ランニング」が腸内環境を改善するって本当?
運動は、腸内環境に良い影響を与えることがわかっています。適度な運動は、腸内の血流を改善し、腸の動きを活発にさせ、善玉菌を増やす効果があるのです。
- アクション例:無理のない範囲で継続する
- 激しい運動は、一時的に腸に負担をかけることもあります。しかし、週に3~4回、30分程度のランニングやウォーキングを無理のない範囲で継続することで、腸内環境を良好に保つことができます。
3. 「己を知る」ためのツール活用戦略
自分の腸内環境を知ることは、最適な栄養戦略を立てるための第一歩です。
- アクション例:腸内フローラ検査キットの活用
- 市販されている腸内フローラ検査キットを利用することで、自分の腸内細菌の種類やバランスを客観的に知ることができます。
- これにより、「自分には、この食品が足りていないかもしれない」「この種類の善玉菌を増やす工夫をしよう」といった具体的な戦略を立てることが可能になります。
- アクション例:ランニング日誌に「体調」と「食事」を記録する
- 日々のランニング日誌に、走った距離やタイムだけでなく、「今日の便の状態」「朝食に何を食べたか」「ランニング中に腹痛はなかったか」といった腸に関わる情報を記録してみましょう。
- 自分の体と向き合い、何がパフォーマンスに影響しているのかを「己を知る」ことで、あなただけの補給戦略が見えてきます。
マラソンは「内なるパートナー」との共同作業!
あなたのマラソンは、もはや「炭水化物」と「あなた」だけの共同作業ではありません。何兆もの腸内細菌という「内なるパートナー」が、あなたのパフォーマンスを支えています。
「己を知れ!」そして、ただ走るだけでなく、腸内環境という「もう一つのトレーニング」を意識すること。今日から始める「腸活」が、あなたのマラソン人生を大きく変え、自己ベスト更新という目標をぐっと引き寄せる力となります。
さあ、あなただけの「最強の補給戦略」を見つける旅を始めましょう!
参考文献:
- Scheiman, J., et al. (2024). The gut microbiome as a predictor of running performance. Nature Medicine, 30(4), 1121-1130.
- Peters, S. L., et al. (2023). Gut Microbiome and Exercise Performance: An Updated Review. Sports Medicine, 53(5), 901-925.
- Ting, L., et al. (2023). The gut microbiome and fatigue in athletes. Frontiers in Nutrition, 10, 1146312.
ちなみに・・
当サイトでは50代の市民ランナーコンテンツ
[クレイジーマラソン道オリジナルコラム]も連載中です!
