『養生訓』では、健康を維持するための予防がとても重要なテーマとなっています。しかし、現代の「予防」とは少し異なる考え方が示されています。現代医学でいう「予防」は、病気を未然に防ぐことが中心ですが、益軒が説く「予防」は、もっと広い意味での健康の向上を目指しています。では、どんな違いがあるのでしょうか?
●現代医学における予防とは
現代の医学では、病気にならないようにするために、定期的な健康診断やワクチン接種、食事制限や運動などが予防策として推奨されています。たとえば、生活習慣病の予防のためには、過度な食事や飲酒を避け、運動をして体重管理を行うことが大切だと言われています。
これらは、病気の発症を防ぐための方法として、非常に効果的です。しかし、『養生訓』における予防は、病気を防ぐためだけでなく、もっと健康で幸福な生活を送るための方法としての予防が重要だと教えているのです。
●養生訓の予防の考え方
『養生訓』で益軒が教える予防は、病気を避けるためのものではなく、よりよい健康と長生きを実現するためのものです。つまり、予防は「病気にならないようにする」ことが目的ではなく、心と体を健康に保ち、自然と調和した生活を送ることが重要だという考え方です。
益軒は、健康を維持するためには、日々の生活の中で心と体を整えることが最も大事だと説いています。具体的には、以下のことが予防のために必要だと教えています:
食べ過ぎないこと:食べ過ぎると体に負担がかかり、病気を引き起こす原因になります。食事は適量を守り、体に良いものを摂取することが重要です。
適度な運動をすること:運動をすることで、体の調子を整え、病気を防ぐことができます。無理をせず、軽い運動を続けることが大切です。
心の整理:心が乱れていると体にも悪影響を与えます。心を落ち着けることで、健康を保つことができます。無駄な心配やストレスを減らし、穏やかな気持ちを保つことが大事です。
●心と体の調和が大切
『養生訓』における予防は、心と体の調和を保つことが大切だと強調されています。体を健康に保つためには、心が穏やかでなければならないという考え方です。現代社会では、ストレスや不安が心身に大きな影響を与えることがよく知られています。益軒も、心の調和を取ることが健康のためには欠かせないと説いています。
たとえば、心が不安定だと、体調が悪くなったり、病気になりやすくなったりします。反対に、心が落ち着いていると、体も元気を保ちやすく、病気にかかりにくくなります。このように、『養生訓』では心の状態を大切にし、心と体のバランスを取ることが予防の基本だと教えているのです。
●現代にも通じる予防の重要性
現代においても、『養生訓』の予防の考え方は非常に有益です。生活習慣病の予防やストレス管理の重要性は、今でも私たちの健康にとって大切なテーマです。食べ過ぎや運動不足、ストレスを減らすことが、病気を防ぐために重要だということは、現代の医学でも繰り返し強調されています。
また、心を落ち着けることが、健康に大きな影響を与えることも、現代医学でも証明されています。心の健康と体の健康が密接に関わっているという点では、益軒の考え方は現代にも十分に通じるものです。
●まとめ
『養生訓』における予防は、病気を防ぐだけでなく、より良い生活を送るための方法としての予防が強調されています。食事、運動、そして心の整理が大切であり、これらを実践することで、健康を保ち、長生きし、幸福な生活を送ることができると益軒は教えています。この予防の考え方は、現代にも通じる重要な教えであり、私たちの生活に取り入れるべき価値があります。